有限会社イーアレー
■現在位置[サイトマップ]:ホームIT事例>コラム

IT事例 コラム

←前のコラム
次のコラムへ→
オープン・ナレッジ・マネジメント
企業内でのインターネットの導入・活用が急速に進んでいる。
インターネットのはしりの頃、まずはホームページを開設して自社のPRを行う事が流行したが、この頃はホームページの作成費も大変高価であった。今なら数万円で出来るものが2桁も違う価格で見積もられ、それと知らずに注文を出す顧客は「インターネット・カモ」とも呼ばれたりした時代であった。
今では多くの企業が、インターネット技術を活用するが外部の者は入れない、いわゆる「イントラネット」を導入し社内事務処理や情報の共有に利用している。
情報共有は今風に言えばナレッジ・マネジメントという事になるが、企業内での情報共有は昔から様々な方法で試みられている。営業部門でみれば、「営業の手引き」や「活用事例集」、「営業虎の巻」などである。
インターネットの導入により情報の更新や検索方法などが改善され、冊子などにより運用されていた時代に比べれば飛躍的に使いやすくなったと言える。

昨年秋に、あるコンピュータ・メーカーの専門家からナレッジ・マネジメントの話を聞く機会があった。自分も含めて出席者が一様に質問した事は、情報提供者に対するインセンティブは何かという事であった。経験的にみると、情報共有の場に生きた情報はなかなか出てこないものである。ネットを活用して運用されようが、根本的なところは変わっていないように思われる。
情報共有のための情報には、日常業務の流れの中でシステムの中に入力されるものと、そのためにあらためて提供させるものがあるが、後者をタイムリーかつ継続的に集める事にはどこでも苦労しているようだ。情報提供者の名前や提供した件数ばかりでなく、利用された回数を公表するなどしてインセンティブに努めているが、決め手はなかなか見つからないようだ。

拙著「間違いだらけのIT常識」(明日香出版社)の中で、事例として紹介させて頂いたアサヒビールのナレッジ・マネジメントの場合、情報提供者に対するインセンティブは「名誉」だけである。それでもうまく運用されているのは、提供される情報が営業日報など日常業務で発生する情報と連携ているからだと思われる。
デイリーに発生する情報を一番うまく活用しているのはコンビニエンス・ストアで、レジの所で取得した情報が売れ筋情報として蓄積されている。

情報共有でもう一つ難しい問題は、情報の収集を企業内に止めるか、それとも顧客の中に積極的に出ていって集めるか、である。
企業内の情報だけではマンネリになり新しい発想も出てこない。外部の知恵を取り込みたい、とどこの企業でも考えるものである。本音を言えば自分の情報は出さずに、外部の情報やアイデアを効率的に入手したい、と誰でも思うものであるが、そうは問屋が卸さないのが現実である。
インターネットの特長はオープンでインタラクティブ(対話型)なところにある。この特長を生かし、顧客との対話により、本当のニーズを掴む事が必要とされる。

そうは言ってもオープンでインタラクティブなネットワークは諸刃の剣でもある。
悪意のある輩やライバル企業の回し者が潜入してくる事も心配される。
顧客の輪の中に情報共有のネットワークを張っていくためには、それ相当の覚悟が必要である。
このような事を書けば誰でも躊躇してしまうかも知れないが、勇気をもってオープンな世界に出て行く事を推奨したい。これは企業だけではなく、行政についても同じことが言える。
オープンな世界でのナレッジ・マネジメントのノウハウを早期に蓄積したところが、市場適応型企業や行政として評価される日が早晩やってくるものと思われる。

更にもう一つ、基本的なスタンスは以上の通りであるが、現実的な話、何でもオープン化すれば良いというものではない。個人情報などの流出にはくれぐれも気をつける必要がある事を指摘しておきたい。
守るべきところはガッチリ守り、外部と情報共有すべきところはどんどんオープン化して行く。要は企業や行政のネットワーク・デザインをどうするかであるが、そのための感性豊かな人材も求められる。

Business@niftyコラム「eビジネスの現場」2001.01.23掲載

←前のコラム
次のコラムへ→

 
| ホーム | IT事例 | プロフィール | お問合せ | サイトマップ |
© 2001-2005 e-alley