頭では、「やめておいた方がいい」とわかっているけど、つい、魅力的に思えてしもうものが、世の中には、たくさんあります。
食べ物に関しても健康に悪そうなものほど、おいしい。
そしていつも「やめておいたほうがいい」と思いながらつい食べてしまうもの、そう、それは、「尽くしモノ」。
尽くしモノとは、ある一つの食材を、様々な方法で、調理してコースにするというやつ。
「カニ尽し」「こんにゃく尽し」とか。尽くしモノには、誰もが一瞬、惹かれるものです。
地方の名産を使っていたりすると、「ここでしか食べられないものだし」「この機会にいろんな調理法で、味わうのもお得かも」とスケベ心が起こる。けれど、最後には、絶対飽きて、「やめときゃよかった」と思うのが、「尽くしモノ」の宿命でもあります。
確かに、尽くしものは、最初の一品、二品までは、美味しく食べることができます。
私も先日、「豆腐尽し」を食べたのですが、最初に出てきたシンプルな冷奴と、あんかけ豆腐は、嬉々として食べていた。しかし三品目になると、突然飽きます。豆腐は、あまりにもさっぱりしているためこのあたりで、「肉、喰いてぇ」という煩悩が、湧いてきてしまうのです。
最後にご飯と、味噌汁(具は、豆腐)が、でてきても、「豆腐じゃヌケない(ご飯のおかずにならない)」などと、下品なことを口走っていました。
やはりどんなに美味しくても、「尽くし」は、飽きるのです。それは、男女関係と同じかもしれません。
しかし、人は、その事実を知っていながら、つい「一人の異性尽くし」ができるのでは、ないかと、幻想を抱いてしまう。
「豆腐尽くし」に懲りても「カニ尽くし」のメニューを見ると、つい食べたくなってしまうように、Aさんに飽きて別れてもBさんに会うと、
「この人となら、一生うまくやっていけるのでは」なんて思ってしまう私たち。
ま、その思い込みはが、現代の結婚制度をかろうじて支えているかもしれません。
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