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鳥井閑の実践的作詞作曲講座

鳥井閑の実践的作詞作曲講座in2BEAT
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-7- 臭みの限界への挑戦 2001年10月30日

 この日、満員状態の2BEATで7回目となった鳥井閑氏の実践的作詞作曲講座が行われた。今日のテーマは"臭みの限界への挑戦"である。"臭み"とはいったい何のことであろうか、そして"挑戦"とは?
 歌いはじめる前に、鳥井氏は今日のテーマである"臭み"について解説をした。ボブディランやジョンバイスなどが、反戦歌に代表されるような社会問題をテーマにしたプロテストソングを歌ったが、日本人がこのようなメッセージ性の強い曲を歌うと、どうもしっくりこない。そして、そのしっくり来ない様を"臭みがある"という言い方をするそうだ。 
 五木寛之はその著作「大河の一滴」の中で"人間は生きているだけで価値がある"という言葉を唱えている。五木氏が言うとなるほど、と素直にうなずける言葉であるが、これを一介のカントリーミュージシャンである鳥井閑がいうと"臭み"がでる。しかし、鳥井氏は今回あえてこの"臭み"の強い、すなわち自分の主張を込めた曲を歌うという。それが"限界への挑戦"なのだそうだ。
「まあ、少し難しいテーマです。」と鳥井氏。
「テーマは難しいけど、酔った勢いで歌うんですね。」とママ。
そう、鳥井氏は今日かなりアルコールを摂っている。カントリーミュージシャンの中には歌う前に酒をあおるアル中が多いらしい。ママはトリカンが本式のカントリーミュージシャンのようだと言ってからかった。

♪コインロッカーより愛を込めて♪

俺らの故郷はよ 新橋駅のコインロッカーさ
  そよ風も太陽もなく 泣き声は冷たい壁にはじかれて
  光を、生命(いのち)を求めて
  ただ、もがいているばかりだった

  それでも何とかよ しぶとく生き延びたのさ
  どこかの誰かがよ 偶然、扉を開けたのさ
  こんなバカつきな事は
  どこにもありゃしねーだろう

  誰も恨みはしないさ この世はどうせコインロッカーさ
  夢を失くした人がよ 大勢、乾いた街角で
  不景気な面をぶら下げて
  ただ、淋しく笑うばかりさ

  生きている事はよ それだけで素晴らしい事だと
  自然に帰ればよ 自由な心が生まれるのだと
  奴らに教えてやりてーのさ
  コインロッカーより愛を込めて
     (Refrain)

 村上龍の小説に「コインロッカーベイビーズ」という題の小説があるが、この曲は村上龍の小説が出る前に書いていたそうだ。ちょうどその頃、新宿駅などのコインロッカーに新生児が置き去りにされる事件が相次ぎ、鳥井氏はそれを題材としてこの曲を書き上げたという。
 さて、続く曲についても鳥井氏はその背景を説明した。かつて菅原やすのりさんという方が8月4日を"地球歌の日"にしようという運動を推進されており、今日の二曲目はこの日にちなんで作ったものである。ところができあがってみると「カントリーゴールド」というイベントを開催しているCharly永谷さんの活動について語った歌となったそうだ。「カントリーゴールド」とは熊本の南阿蘇で開かれているカントリーミュージックのイベントで、アメリカから毎年五組ほどのカントリーミュージシャン達を呼んで行われる。二万人の観客が詰め掛ける大きなイベントで、これを主催しているCharly永谷さんは2BEATにも縁の深い方だという。音楽を通じて世界を広げていこうというCharly永谷さんの活動、そんな理想を歌ったのが次の曲であった。

   ♪歌、命、世界♪

  歌に命を賭けるなんて 大げさな事だけど
  他に命を賭けるものもない
  歌を歌えりゃ 贅沢言わない 喜びさえも忘れてしまう
  歌い狂って夜も明けて 大きく口を開けたまま
  くたばってしまっても悔いはないさ
  俺らの生きがい それは歌だ 歌は情熱 心の叫びだ
  歌、命、世界 歌、命、世界 心のまま歌う

  歌が世界を変えるなんて ありそうもないけれど
  他に世界を変えるものもない
  歌を歌えば 仲間が集まり やがて大きな輪になり広がる
  言葉なんて通じなくても 肌の色は違っていても
  肩組み歌えば笑顔がこぼれる
  世界を結ぶもの それは歌だ 歌は友達 世界の言葉だ
  歌、命、世界 歌、命、世界 愛を込めて歌う
      (Refrain)
  歌、命、世界 歌、命、世界 歌、命、世界

 朗々とした声で歌い上げた鳥井氏に拍手が起こった。これだけのメッセージを込めた詩を歌うのはなかなか勢いが必要であろうが、2BEATのメンバーには鳥井氏の言わんとしていることが理解できたようである。何しろ音楽好きばかりが集まる店である。音楽の持つ力を知っている人達である。
「とても良い内容ね。」とはママの感想。
「この曲はもっとカントリー調にアレンジしたかったのですがね。」
「今日はこんな重いテーマに最後まで御付き合い頂きありがとうございました。」と鳥井氏がカウンターの客に向かって遠慮がちに述べると、
「どういたしまして!」お客の頭ごしに綾ちゃんが叫んだ。
「あ、いや。綾ちゃんじゃなくて他のお客さんに言ったんだけど…」虚をつかれた鳥井氏がちょっとうろたえて言う。2BEATに笑いの渦が起こった。
 音楽の持つ可能性は無限であるが、それでも自分の理想やメッセージを上手く表現していくことは難しい。どうやってそれに挑戦していくかを教えてくれたのが今日の鳥井閑の実践的作詞作曲講座であった。

文責 ゆうき

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-7- 2001年10月30日
 
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