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鳥井閑の実践的作詞作曲講座

鳥井閑の実践的作詞作曲講座in2BEAT
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-4- 季節感 2001年10月16日

 その日、2BEATにはアメリカのオクラホマからきた二人連れがいた。オクラホマといえばカントリーの本場である。二人にとってカントリーミュージックとは小さいころから慣れ親しんだ生活の一部のようなものなのだろう。彼らが歌う姿を見ると、まるでそのリズムが体に染み込んでいるようでとても自然だった。しかしオクラホマからのお客さんも、どうやら日本のカントリーファンの歌と2BEATのジャンバラヤの味にはすっかり満足したようである。やはり歌は万国共通語。誰かが一曲歌うたびに店内はどんどん盛り上がっていった。
 そんな中、鳥井閑の作詞作曲講座第4回目の始まりである。
「鳥井閑さ〜ん、今日もよろしく!」綾ちゃんが調子よく鳥井氏を迎えた。
「第四回目ということでだいぶ余裕が出てきました。前回ははメロディーラインがテーマでしたが、今回のテーマは"季節感"ということで季節感のある歌詞の曲に絞って歌います。」 
ギターをポロポロ爪弾きながら語る鳥井氏には、その言葉どおりのゆったりした様子が見られる。
「まず最初の曲は、5月病という題で、まさに5月の新入生や新入社員の憂鬱を科学的に解明した曲です。」
テーマの"季節感"は分かるが、5月病の"科学的な解明"とは歌にしては少し変わった内容だなあ、と私は思った。そんな私の疑問には関係なく鳥井氏の歌が始まる。

♪5月病♪

  5月の風が頬を撫でる 眠っていた俺が眼を覚ます
  あたり一面眩い光 木々の緑が目に染みる
  これは何だ これは何だ 今まで 俺が求めてきたものが
  まるでくすんで見える もっと素晴らしい世界があるようだ
  行ってみよう 行ってみよう 行ってみよう 行ってみよう
  5月の風に吹かれてみよう

  5月の空に鳥は歌う 自由な世界へ巣立って行く
  自分の力で飛んで行け 誰かが教える訳じゃない
  そうだ そうだよ 今まで 俺が歩いてきた道は
  他人が作った筋書きさ 小さな夢は捨ててしまおう
  それよりも それよりも それよりも それよりも
  5月の青空見つめていよう

  5月の日差しは夏の気配 裸で寝そべる肌に痛い
  何かやろうと思ってみても 季節の力にゃ勝てはしない
  それでいいさ それでいいさ 今更 力んで何かをやるなんて
  まるで馬鹿げた話さ 今はぼけっとしているだけでいい
  このまま このまま このまま このまま
  5月の日差しに打たれていよう

  このまま このまま このまま このまま
  5月の日差しに打たれていよう

 私は5月に限らず、ちょっと天気が良いだけですぐ会社をサボりたくなる。天気が良い日にデスクに噛付いていたくなんかない。学生のときのようにさっさと授業をサボって、ただベンチでタバコをふかして空を見て、何もせずにいたいものだ。未だにそんな甘い考えをもっている自分を指摘されたようで、この歌を聴いた私は苦笑するしかなかった。
「五月病でした。5月の気分を思い浮かべていただければよいのですが。」と鳥井氏。
カウンターの客も笑いながらうなずいていた。五月晴れの日、青空の下で会社に向かう人は皆同じ気持ちなのだろう。そろそろ秋も深まりつつあるこのごろであるが、私はふと5月の気分を思い出した。
続いた曲は夏を飛び越えて秋の歌である。スローテンポのリズムが刻まれた。

   ♪暑い9月は過ぎて♪

  夏の花が咲き誇り 我がもの顔に時を止めて
  秋待つ者を苛立たせます
  べとつくような都会の日々が 汚れた空に照り返し
  気だるさだけが 影落としても 君の微笑み爽やかに
  暑い9月は過ぎて行き 愛が蘇ります

  秋の花が咲き始め 花びらに見るその淋しさは
  驕れる者の夢醒まします
  肩怒らせて歩いた日々も 乱れた空に舞い上がり
  虚しさだけが 吹き溜まっても 君の眼差し温かく
  暑い9月は過ぎて行き 愛が蘇ります

  秋を忘れた間抜けな夏が くすんだ空に溶け込んで
  冬の訪れ 急ぎ足でも 君の温もり柔らかく
  暑い9月は過ぎて行き 愛が蘇ります
  愛が蘇ります

少し切ない曲だった。秋が来る度に暑さを乗り切った爽やかと少し切ない気分が襲ってくる。毎年のことであるのに、夏が来ればその暑さに心が躍り、秋が来ればやがて来る冬を思って寂しさと人恋しさがつのる。"暑い9月が過ぎて"はそんな秋の気分を見事に表現していた。気温の変化、すなわち季節の移り変わりと人の気分には密接な関係がある。今日の二曲はそれを見落とさずに拾い上げたところに生まれた歌なのだろう。
何気ない言葉も、リズムに乗ることでどんどん広がっていく。音楽となった言葉はただの言葉以上に人に直接語りかけることができる。だからこそ、ギターが一本あるだけで言葉の違いさえ乗り越えて盛り上がることができるのだろう。音楽の持つ力を実証してくれた鳥井氏の講座であった。

文責 ゆうき

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-4- 2001年10月16日
 
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